Bundesliga
将来を嘱望される若手タレントがひしめくブンデスリーガで今、にわかに脚光を浴びている選手がいる。
今夏にイングランドのワトフォードから1年間の期限付き移籍でフォルトゥナ・デュッセルドルフにやって来たドディ・ルケバキオだ。Uー21ベルギー代表のレフティーはブンデスリーガ第12節でドイツ国内だけでなく、世界中のファンの度肝を抜いた。バイエルン・ミュンヘンの本拠地アリアンツ・アレーナでハットトリックの離れ業をやってのけたのだ。
ブンデスリーガの舞台でバイエルン相手に1試合3ゴールは、元シャルケのエッベ・サンド以来18シーズンぶりの快挙だ。同時に、ベルギー出身選手ではニコ・クラーセン(元シュトゥットガルト)、エミール・ムペンザ(元シャルケ)、バルト・ホール(元ヘルタ・ベルリン)に続くブンデスリーガ史上4人目のハットトリック達成者となった。記録尽くしの偉業に、保有権を持つワトフォードはクラブ公式サイトで「ハットトリック・ヒーロー」と手放しで称賛している。
母国の名門アンデルレヒトの下部組織で育ったルケバキオは、フランスのトゥールーズでの武者修行を経て2017/18シーズンの前半にシャルルロワで頭角を現した。今年1月に加入したワトフォードではプレミアリーグの分厚い壁に直面してベンチに入れない日々が続いたが、それが今夏のドイツ行きの契機となった。
デュッセルドルフのフリートヘルム・フンケル監督は当初、ルケバキオには新たな環境や戦術に適応するための時間が必要だと考えていた。8月のドイツサッカー連盟カップ(DFB杯)1回戦でいきなり2ゴールを挙げても、序盤戦はジョーカー的な起用にとどめていたほどだ。若い選手を慎重に、大切に育てようとする指揮官の思い……ルケバキオはその思いに応えるように日ごとに存在感を増し、バイエルン戦で一気にブレイクを果たした。
ルケバキオの持ち味はドイツ代表のニクラス・ズューレとジェローム・ボアテングを置き去りにしたスピード、そのスピードを活かした裏への飛び出し、そしてカットインからの左足シュートだ。これまでアリエン・ロッベン(バイエルン)やジェイドン・サンチョ(ドルトムント)、レオン・ベイリー(レーバークーゼン)と対戦経験があるヴォルフスブルクのDFジェローム・ルシヨンは、ルケバキオについて「ドイツで出会った中で最高の対戦相手。とにかく速かった」と舌を巻く。21歳の若者のさらなる成長と活躍を期待せずにはいられない。
文=遠藤孝輔