Bundesliga
かつて「未来のドイツ代表キャプテン」と称されたエムレ・ジャンが、ブンデスリーガの舞台に戻ってきた。リバプール(イングランド)で4シーズン、ユベントス(イタリア)で1シーズン半を過ごしたMFが選んだ新天地はドルトムント。シーズン終了までの期限付き移籍だが、完全移籍に移行するオプションが付随されている。
レーバークーゼンでプレーした2013/14シーズン以来となるドイツ復帰を果たしたジャンは、ドルトムントの公式サイトで「BVBは大きなポテンシャルを秘めていて、タイトルを勝ち取る力を持っている。僕ならきっと、その目標を達成する手助けができると思う。早く始めたいよ。このクラブにはずっと好印象を持っていた。ボルシア・ドルトムントの名を世界中に広めた、あのファンの前で初めてプレーする日が待ち遠しいね」とコメント。逆転でのブンデスリーガ制覇を目指すチームの大きな力となりそうだ。
地元フランクフルトのアマチュアクラブでサッカーを始め、2006年にアイントラハト・フランクフルトのユースに加入。2009年にバイエルン・ミュンヘンの下部組織に移籍した後はコンスタントにドイツのユース代表に名を連ねるようになった。2011年のU-17ワールドカップでは主将の重責を担い、チームの3位入賞に大きく貢献。将来のドイツ代表キャプテンとして期待されるようになったのもこの頃だった。
ブンデスリーガデビューは2012/13シーズン第29節のニュルンベルク戦。バイエルンでは分厚い選手層に阻まれて翌シーズンに出番を求めてレーバークーゼンに移籍したが、新天地で背番号10を託されると文字どおりのブレイクを果たす。サミ・ヒーピア監督、そして後任のサシャ・レヴァンドフスキ監督の信頼を勝ち取り、守備的MFを主戦場に左サイドバックやセンターバックもこなす守備のマルチロールとして活躍。欧州チャンピオンズリーグ出場権を獲得することになるチームの主力として年間を通して安定した働きを見せた。
リバプールとユベントスでの挑戦を経て、当時から定評があった強靭なフィジカルや確かなテクニック、戦術理解度の高さにますます磨きがかかった印象だ。まだ26歳、ここからさらに成長する可能性も十分に秘めている。ドルトムントのミヒャエル・ツォルクSDが「勝利への強い意志を持っている」と語るように、国外の名門で培った勝者のメンタリティも兼備。多彩な魅力を備えている。
3ー4ー3システムが基本のドルトムントではセントラルMFはもちろん、3バックにも柔軟に対応できる。非凡なダイナミズムも持ち合わせるジャンは、同時期に加入したエアリング・ハーランドとともに、「黒と黄」に大きな追い風をもたらしそうだ。
文=遠藤孝輔